海口彦太選手

「自分の言葉で気づき、
具体的な一歩に変わる」

© Reilac Shiga FC
海口彦太
© Reilac Shiga FC
海口 彦太(うみぐち げんた)
アスリート
2025年度、滋賀県初のJクラブへと昇格を果たしたレイラック滋賀FCのキャプテン。
黒澤周平
黒澤 周平(くろさわ しゅうへい)
スポーツメンタルコーチ / InSide
2014年に株式会社リクルート(現インディードリクルートパートナーズ)へ入社。営業組織のマネジメントをしながら、一般社団法人フィールド・フローでスポーツメンタルコーチングを学び、活動中。趣味はサッカー観戦とランニング。
杉本丞
杉本 丞(すぎもと たすく)
インタビュアー
2021年より、求人メディア「日本仕事百貨」にて、取材・執筆を担当。からだを動かすことが好きで、中学校から陸上競技部へ入り、走高跳を始める。ふたたび競技復帰に向けてトレーニング中。

海口彦太さんは、レイラック滋賀FC所属のサッカー選手。Jリーグ昇格をかけた勝負の年に、黒澤さんのコーチングを導入しました。どんな課題を抱えていたのか、実際にどのような変化が起きたのか。2人と共に9ヶ月間のコーチングを振り返っていきます。

―まずは、コーチングを受けてみることにした経緯から聞かせてもらえますか。

海口:

ちょうど1年前ですね、チームのキャプテンを任されることになって。でもどうやってチームをまとめていけばいいかわからない。チームとしては「3年計画でJリーグ昇格」を目指す最終年、順位はいつもあと一歩というもどかしい状況でした。

もし今年上がれなかったら、僕自身も現役を引退しようと心に決めていて。どうやってその状況を変えていくか、それから個人的な将来のことも色々聞いてみたいというのが始まりでした。

黒澤:

最初の印象は、考えることがすごく好きな方なんだな、ということ。今こういうことが起きていて、こう改善したいけれど、ここにつまずいている、といった状況がすらすら出てくる印象でした。


―セッションはどのように進めていったのでしょう。

黒澤:

毎回最初に、今日はどういうテーマで話したいですか、ということを聞くようにしています。海口さんの場合は3つぐらいかな、キャプテンとは何をすべき存在なのか、個人のレベルアップのためのモチベーション管理について。あとは今年Jリーグに行けなかったら引退なのか、このまま続けるべきなのか。

そこから優先順位をつけて、現状今何を感じていて、どういうことを思っているのか、いろんな角度から深掘りしていきます。出てきたものを踏まえて、次にゴール設定をし、その差を埋めるために何をするか。そんな流れで毎回進めさせてもらいました。

たとえば、「失点シーン」の話になったとき、2人で過去の試合日程を見返しながら、前半10分以内に失点している試合を全部洗い出したこともありました。あのとき海口さんが、「相手の情報が、今までよりディフェンスラインにインプットされていないかもしれない」って気づかれたんですよね。

海口:

ロングボールで崩されたとか、ほんとうに具体的に失点シーンを振り返り、どのタイミングで失点しているか、どういう決められ方をしているか調べて。想像していたよりも相手の攻めが早かった、みたいな。自分たちの想像を超えた時に立ち上がりで失点されていることに気づきました。

勝手に想像するのではなくて、もっと情報を先に手に入れて分析する必要がある。そこから「じゃあスタッフにこう働きかけてみよう」という具体的な行動まで落とし込めました。

黒澤:

後半シーズンは、立ち上がりの失点がほとんどなくなりましたよね。


―シーズン中盤、海口さんがスタメンを外れるという大きな出来事がありました。

海口:

スタメンから外れたのはやっぱりショックでしたけど、逆に悔しさを感じることができて良かったです。個人としてもまだサッカーを頑張りたいんだ、という自分のなかの熱い気持ちに気づけたので。

黒澤:

コーチングの前半は、引退したあとの話、何歳のときに家族構成は何人いてとか、キャリアの話も多くしていたんですけど、この辺りからスタメンを取りに行くためにはどうすればいいのか。サッカーの話に戻ってきた印象があります。

あの時期の海口さんは、個人としてスタメン入りしたい気持ちと、キャプテンとしてチームを勝たせるための責任感の間で揺れていました。そこで僕が自分のマネジメント経験から「あえて弱みを見せることで組織が強くなることもある」という話をチラッとしたんですよね。

海口:

入れ替え戦の3試合前ぐらいのタイミングで思い切って自分の悔しさや、それでも最後まで諦めない姿勢を本音でさらけ出しました。自分の身の丈を話すことで、チームの一体感が増したと思いますね。


―そこからベンチ入りして、最後の入れ替え戦でスタメンになったんですよね。

海口:

当日の様子まで事前にイメージしようって、黒澤さんが言ってくださって。スタジアムには何人の観客が入り、どういう音が聞こえるか、どういう情景が見えるか。試合展開も考えていくと、最後は僕が必要になるはずだという話になって。本当にその通りになったので、うわ、すごいなって思いました。

黒澤:

身体感覚的なところは重要視しています。イメージをリアルにしていくことで、必要なこともわかってきますから。入れ替え戦は僕も現地に応援しにいったんです。ホイッスルが鳴った瞬間に、海口さんが腰の近くでガッツポーズをしていて。あの瞬間は、僕の人生のハイライトに残る瞬間です。


―あらためて、コーチングを受けて得られた変化はどんなものがありますか。

海口:

毎回ゴールを設定して話していると、勝手に深掘りされてる感覚になるんです。

―勝手に深堀れる状態になっている?

海口:

練習前の声掛けで何を喋るかまで、本当に細かく一緒に考えてもらって。それは黒澤さんの意見というよりも、僕がどう言いたいのかを考えていく感じ。自分の言葉として整理できているから、取材や人前でも言葉がスラスラと出てくるようになったんだと思います。

あとは今日から何しよう、明日から何しようという行動まで明確に落とし込めるようになったのも大きいですね。この力はサッカー選手にとって大事なのかなって。

日常は練習してケアして、ずっと同じ日の繰り返しになりがちです。ちょっとずつ前に進んでいる感覚が自分のなかにないと、精神的に苦しい。そういう意味で、心の充実感もありました。アスリートはもちろん、日々悩みがあるすべての人に受けてみてほしいですね。


―今後の展望はいかがでしょう。

海口:

もちろんサッカーをプレイしている以上は、J2、J1を目指していきたいなと思います。あとは、ひとりの人間としてどういう人間でありたいかを模索したいですね。サッカーを自分から取った時にどんな存在になりたいのか。常に自問自答し続けて、幸せでありたいです。

黒澤さんと海口さんの関係を見ていると、となりに並んでいる感じがする。

それは、コーチとしての役割をきちんと担いながらも、黒澤さんの根っこに話し手への純粋な興味があるからだと思う。取材のはじめも終わりも、自然と雑談するように海口さんに質問を投げかけていたのが印象的だった。表面上でない、黒澤さんだけの質問。

自分に関心を寄せ続けてくれる存在がいる。色んな角度から問いを投げかけてくれる。話すほうは勝手に深く潜っていける状態がつくられ、自分で道を切り拓くことにもつながる。

毎日の繰り返しの中で、自分はどこへ向かいたいのか。

自分だけの問いを深めて、明日を変える力を育む時間が流れているように感じました。
あなたの内側に、向き合う時間を。

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